被災地・珠洲市支援 小中学校の子どもたちと校庭の仮設住宅にくらす地域の方々をつなぐ「寄せ植えプロジェクト」

被災地・珠洲市支援 小中学校の子どもたちと校庭の仮設住宅にくらす地域の方々をつなぐ「寄せ植えプロジェクト」

2025.02.18
くみまち・サステナビリティ

能登半島地震(2024年1月1日)で被害を受けた石川県の能登地域で、カインズはメンバー(従業員)が直接物資を避難所や避難者へ配布するなどの支援を継続して行ってきました※1。そのときのご縁から、珠洲市内の小中学校にて子どもたちと学校敷地内の仮設住宅でくらす地域の方々が参加する「寄せ植えプロジェクト」を2024年5月から4回にわたり合計8校(2024年9月12日現在)で行いました。本プロジェクトを通じてつながりのできた珠洲市教育委員会 吉木充弘教育長のお話しと共に、プロジェクトの取組内容をご紹介します。

珠洲市みさき小での寄せ植えの様子
9月に実施したみさき小学校では児童32名(1年生~6年生)、地域住民約5名が参加。ペンタス、センニチコボウ、ニチニチソウ、ナデシコを寄せ植えした

花を通じて子どもたちと仮設住宅でくらす地域の方々に元気を

震災により、現地の学校は体育館や教室などの施設を避難所として提供することになりました。その後、学校のグラウンドには仮設住宅が建ち、地域の方々がくらしはじめます。

震災直後から庁舎で寝泊まりし、復旧・復興に向けた取り組みを進めていた珠洲市教育委員会の吉木充弘教育長は、学校に通う子どもたちと学校に建った仮設住宅でくらす地域の方々が共に生きていくために、どんなことができるかを考えていました。

吉木教育長:現在、珠洲市内には公立小中学校が11校(上戸小学校、飯田小学校、直小学校、若山小学校、正院小学校、蛸島小学校、みさき小学校、三崎中学校、宝立小中学校、大谷小中学校、緑丘中学校)あり、そのうち10校に仮設住宅があります※2。子どもたちを中心に考えると、早く学校を再開したいという想いがある一方で、学校のグラウンドには仮設住宅があります。避難されている方々の生活と子どもたちの学校活動との共存を考えました。

発災直後に「あったかロールクッション」の支援物資をいただき、カインズとご縁ができ、カインズの企業サイトを見ました。カインズ 朝霞店が隣の小学校と寄せ植えを行ったこと※3に加え、カインズのコアバリュー「Kindnessでつながる」やくみまち構想を知りました。それで、厚かましくもカインズに電話したのです。

実はずいぶん前のことですが、娘が長野県の大学に入学するときにカインズで学生生活の準備をしていたのです。石川県にカインズはないですが、長野県では利用させていただきました。

珠洲市教育員会 吉木充弘 教育長
珠洲市教育員会 吉木充弘 教育長

吉木教育長:震災で校舎も住宅も壊れているなかで、花があるといいなと思ったのです。花は高齢者と子どもをつないで元気にすることができます。珠洲はもともと農家が多い地域ですし、普段から学校や自分の家で花を育てています。

花を植えることは、子どもたちや地域の方に喜ばれるだろうと思いました。

寄せ植えから生まれた学校と仮設住宅でくらす地域の方々との交流

吉木教育長のお話から、とにかく明るく楽しいことをしたいという気持ちを感じ、カインズからは改めて寄せ植えを提案しました。寄せ植えは一人ひとりが作業でき、一つずつ作ることができる。子どもたちと仮設住宅でくらす地域の方々とが一緒に作ることで交流が生まれる。

4種6株の花を使い、プランターに自分の名前を書いたネームピックを挿します。ネームピックがあることで、自分が作った寄せ植えが分かり花の手入れがより楽しくなり、花の成長を見守ることができます。

被災地・珠洲市支援 小中学校の子どもたちと校庭の仮設住宅にくらす地域の方々をつなぐ「寄せ植えプロジェクト」
被災地・珠洲市支援 小中学校の子どもたちと校庭の仮設住宅にくらす地域の方々をつなぐ「寄せ植えプロジェクト」

初めての寄せ植えは5月9日に宝立小中学校で行いました。前期課程(小学校段階)の児童20名、地域住民約10名が参加しました。

宝立小中学校の前期課程の児童と地域の方とが寄せ植えを行う
宝立小中学校の前期課程の児童と地域の方とが寄せ植えを行う

2回目は6月5日・6日に宝立小中学校の後期課程(中学校段階)(生徒16名、地域住民約7名)と正院小学校(児童14名、地域住民約5名)、若山小学校(児童16名、地域住民約5名)で行いました。

宝立小中学校で鉢植えを行う
宝立小中学校で鉢植えを行う
正院小学校
正院小学校
若山小学校
若山小学校

3回目は7月4日・5日に蛸島小(児童25名、地域住民約5名)、上戸小(児童23名、地域住民約5名)、直小(児童59名、地域住民約7名)で行いました。

蛸島小学校
蛸島小学校
上戸小学校
上戸小学校
直小学校
直小学校

4回目は9月11日・12日に三崎中(生徒14名、地域住民約5名)、みさき小(児童32名、地域住民約5名)で行いました。

三崎中学校
三崎中学校

仮設住宅でくらす地域の方々へは、掲示板での案内や行政からの告知など様々な方法でお知らせしました。とある小学校では、案内チラシに子どもたちが一言メッセージを入れ、仮設住宅でくらす地域の方々に手渡ししたとのこと。

宝立小中学校では、寄せ植えのそばに立て看板を設置して地域の方との花育てに取り組む
宝立小中学校では、寄せ植えのそばに立て看板を設置して地域の方との花育てに取り組む

また6月にはNHKや北陸朝日放送などが寄せ植えの様子を取材。子どもと仮設住宅でくらす地域の方々との交流、孤独死を防ぐコミュニティ作りの取り組みとして報道されました。

5月に正院小学校で実施した寄せ植えの花が9月になっても咲いている
5月に正院小学校で実施した寄せ植えの花が9月になっても咲いている。後ろの黒い建物は仮設住宅。夏休み中は地域の方々が水やりなどの手入れをされていた

初めてでも楽しくできた寄せ植え

参加した子どもたちや地域の方の感想は……。

みさき小学校にて。寄せ植えの後、プランターを校庭に移動
みさき小学校にて。寄せ植えの後、プランターを校庭に移動

○子どもたち
「授業前は、寄せ植えは大変だと思っていたけれど、やってみたら楽しかったです」
「今日、初めて寄せ植えをしました。楽しくできました。寄せ植えの方法を地域の方とカインズの方に教えてもらいました」

○地域の方
「子どもたちと一緒に寄せ植えができてよかったです。説明書にある花言葉がよかったですし、お花のチョイスもよかったです」
「仮設では、なかなか子どもたちと接する機会がないですね。今日のイベントは楽しく、ペアになった子どもと仲良くなれました。これからは見かけたときに声をかけてみたいです」
「以前、学校で行われたイベントのときに知り合った子どもが今日もいました。その子と交流できてよかったです」

震災後、不便さを感じながらも学校生活はだんだんと落ち着きを取り戻し、行事も少しずつ再開していきます。2024年秋に開催された第14回日中韓青少年国際書画交流展にて、展示会テーマの「花」にあわせて直小6年生が寄せ植えの思い出を色彩豊かにそして力強い筆致で描いていました。カインズが子どもたちの心に残る取り組みをサポートできたことをうれしく思います。

直小6年生の児童が寄せ植えの様子を表情豊かに描いた
直小6年生の児童が寄せ植えの様子を表情豊かに描いた

寄せ植えから生まれた日々の会話と行動のきっかけ

寄せ植えの発案者である吉木教育長は、実際の取り組みをどのように感じたのでしょうか。

吉木教育長:子どもたちも地域の方もみんな笑顔でしたね。5月はまだ水が出ない頃で、校務員の方がタンクに入った水を軽トラで運んで持ってきてくれました。夏休み中は仮設住宅でくらす地域の方々が手入れをしてくれて、様々な場面で子どもたちと地域の方がつながることができました。寄せ植えだけでなくネームピック作りなどのDIYも実施できてよかったですね。

私自身、豊かな気持ちになりましたし、共同作業とはこういうことかなと感じましたね。

寄せ植えを行ったことで感じる、子どもたちや地域の方々の変化……。

吉木教育長:子どもたちや地域の方が、毎日花の世話をできること自体がよいことだと思っています。震災があっても学校に花がある。

仮設住宅でくらす地域の方々も子どもも、一緒に寄せ植えしたことで何気ない会話ができるようになる。ひとつの話題ができる。外に出て花の様子を見てみようと思う。寄せ植えは会話や行動のきっかけになる。そういうことがすごく大事だと思います。

取引先様の協力も得て備品を準備

寄せ植えを実施するにあたり準備した物は、花苗、プランター、土、ネームピック、寄せ植えの説明資料と、寄せ植えするための道具としてシャベル、ジョウロなどです。

○取引先様からの苗とプランター提供
花苗は、カインズと取引がある角田ナーセリー様(愛知県)にご相談して、季節にあった花の苗を一部協賛として約1,300個用意していただきました。夏の暑さに強い、初心者でも子どもたちでも育てやすい品種を選んでいます。プランターはリッチェル様(富山県)に協賛として約230個をご用意いただきました。同じ北陸地域で事業展開するリッチェル様のプランターはアイボリーのやさしい色合いです。

寄せ植えに使った備品と説明資料
寄せ植えに使った備品と説明資料

○花言葉とモニュメント
ネームピックはカインズ工房でワークショップを行ったり、群馬県庁でのイベントで作ったりしていたレシピがあり、それを珠洲市用にアレンジしました。

自分が寄せ植えしたプランターに立てるネームピックに好きな色を使って名前を書く
自分が寄せ植えしたプランターに立てるネームピックに好きな色を使って名前を書く

説明資料には、寄せ植え後も見返しながら手入れができるよう、手順だけでなく、花の名前や特徴なども記しました。子どもたちが読めるように難しい言葉を使わず、漢字にはフリガナをふり、写真やレイアウト図などを使って分かりやすいように心掛けました。

説明資料を見ながら寄せ植え。初めて経験する子どもたちがほとんどだったが、一つひとつ丁寧に苗を植えていた(三崎中学校)
説明資料を見ながら寄せ植え。初めて経験する子どもたちがほとんどだったが、一つひとつ丁寧に苗を植えていた(三崎中学校)
モニュメントを組み立てるため電動ドライバーでビス打ちする宝立小中学校後期課程の生徒たち
モニュメントを組み立てるため電動ドライバーでビス打ちする宝立小中学校後期課程の生徒たち

宝立小中学校では寄せ植えを「学校と地域をつなぐシンボル」として、木製のモニュメントを後期課程の生徒と地域の方とが一緒に制作しました。

5月の寄せ植え後に校長先生とお話ししたなかで「記念としてなにかをつくりたい、仮設住宅でくらす地域の方々と子どもたちをつなぐシンボル―看板ではないモニュメント―が欲しい、そして住民と子どもが一緒に作るものがよい」とご相談いただき、取り組んだものです。

モニュメントを組み立てるため電動ドライバーでビス打ちする宝立小中学校後期課程の生徒たち
宝立小中学校でのモニュメントづくりの様子。板に防腐剤を塗りビスでくぎ打ち、土を掘ってモニュメントを立てる工程をグループに分かれて行った。土が固くなかなか穴が掘れなかったり杭打ちに手こずったりしたが、生徒たちと地域の方が一緒になってモニュメントをつくった

2本の木製モニュメントは生徒と地域の方とでグループを作ってDIY。工程を4~5つくらいに分けて各工程で作業を進めます。デザインはカインズメンバーが考案。プロジェクトに参加するカインズメンバーが、事前に見本を制作して工程や材料などを確認し、宝立小中学校へと向かいました。

子どもたちや地域の方々と寄せ植えの完成をねぎらうカインズメンバー
子どもたちや地域の方々と寄せ植えの完成をねぎらうカインズメンバー

この寄せ植えプロジェクトは当初、仮設住宅がある学校全部での実施を相談いただきましたが、今後の状況がどうなるか分からないため、カインズとしては実施数についてはお約束することができませんでした。それでも結果として、5月から始まり9月まで計4回、予定していた8校全てで実施することができました。

子どもたちが楽しそうにしている姿、地域の方と子どもたちの交流、寄せ植えしたあとの手入れの様子などを見聞きして、私たちも心温まる気持ちになりました。

植えただけではない、その後も続く交流

吉木珠洲市教育長
「カインズは子どもたちの接し方がうまいですね。思いやりの心でしょうか。それは商品にも込められているのではないかと思っています」とお話しくださった吉木珠洲市教育長

吉木教育長:カインズの社名の由来となるKindness、くみまち学校のとりくみ、企業のポリシーが素晴らしいと思いました。石川県にカインズの店舗がないなかで、群馬や埼玉からわざわざ支援をいただいた。寄せ植えの説明資料にあった花言葉もよかったですね。

私たちが寄せ植えの説明資料で工夫をした点がもう一つありました。花により興味を持ってもらえるように豆知識も加えたのですが、その中に花言葉を添えたのです。花言葉は、花の色や形、その植物が持つ性質などからつけられます。「ペンタス」は花びらの形が星型なので「願い事」や「希望がかなう」などの花言葉があります。資料に記載した花言葉は、復興への思いを込めて選んでいます。

子どもたちが花言葉を調べて、新たな発見につながることもあるでしょう。花と触れ合うなかで、花にさらに興味を持ってもらえたらという願いも込めて……。

寄せ植えのときに子どもたちや地域の方にお渡しした説明資料
寄せ植えのときに子どもたちや地域の方にお渡しした説明資料。寄せ植えのレイアウト、花の特徴や花言葉などを紹介している

吉木教育長:子どもたちの感想に「花言葉に『楽しい思い出』や『変わらない愛情』などの意味があって希望が持てる感じがしました」とありました。私もまったく同じ気持ちで、花言葉の中には、「夢」「希望」「勇気」「優しさ」「願い事」「思い出」「健康」「挑戦」「未来」「強い意思」といった、珠洲市のこれからの復旧・復興に向けて、私たちを支えてくれる大切な言葉、これからの未来に向かって前向きになれる言葉を多く感じることができました。

寄せ植えプロジェクトは点じゃないんです。子どもと仮設住宅でくらす地域の方々が一緒に植えてから、その後もずっと咲いていて、手入れもします。来年になったら、自分たちで育てるかもしれない。

9月の水害支援に向かう

2024年9月21日、残念なことに能登地方は再び災害に見舞われます。線状降水帯が停滞し、記録的な豪雨が町に甚大な水害をもたらしました。川の氾濫や土砂崩れなどが多数発生し、多くの建物が床上浸水の被害を受けました。

カインズは9月26日に能登町と珠洲市へ向かい、珠洲市では寄せ植えプロジェクトを行った小中学校の様子を見てきました。残念なことに、とある学校では寄せ植えがすべて流されてしまっていました。

それでも水害後の学校訪問で、ある学校の校長先生が「最初、花壇は学校側で管理していましたが、仮設住宅でくらす地域の方々が積極的に朝晩の水やりなどをしてくださった。災害がきっかけで仮設住宅にくらす地域の方々と同じ敷地内にいることになり、一つの家族のように感じている」とお話しくださいました。その言葉を聞き、私たちは救われる思いでした。

さらに11月には、水害によりプランターが流されてしまった学校を再び訪問し、寄せ植えを実施しました。吉木教育長の言葉の通り、寄せ植えプロジェクトは点ではなく、子どもたちや地域の方々をつなぐ確かな絆として、現地のくらしに寄り添いながら続いています。

2024年11月に再訪して行った寄せ植えの様子
2024年11月に再訪して行った寄せ植えの様子
2024年11月に再訪して行った寄せ植えの様子

※1:
能登半島地震の支援へ 「店舗がない被災地に支援物資を届ける」その想いとは
https://www.cainz.co.jp/contents/9155/

令和6年能登半島地震:カインズの被災地支援活動について
https://www.cainz.co.jp/news/7672/

令和6年能登半島地震に係る災害支援募金 寄託のお知らせ
https://www.cainz.co.jp/news/7885/

※2:インタビュー当時の様子

※3
あいさつから始まった小学生と朝霞店との花壇づくり
https://www.cainz.co.jp/contents/6786/

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